人生を方向付けた母の訓え
私は、大正3(1914)年2月10日、つくば市北条生まれ。
私の幼年時代に、母は旧暦三日の夕方になると、
いつも私の手を引いて、裏の野に出て手を合わせ、
三日月様にお祈りして後、私によく次のように話した。
「お前は五黄の寅の年の、寅の月の寅の日の寅の刻に
生まれたのだから、お前はだれよりも運が強く、
大きくなったら世界中を広く駆け巡って活躍する男になるよ。
だからお前は横文字もうんと勉強しなければならないよ。
トラは千里行って千里戻るというんだし、
五黄の寅というのは、男にとって最高の星なんだから。
しかしお母さんは巳年の生まれ。
巳の人は執念深く、一度こうと覚悟を決めたら、
どんな迫害を受けようとも、途中でどんな困難に遭おうとも、
決して挫けることなく、歯を食いしばってこれに堪え、
最後に必ず目的を達し、事を成功させる性格なんだよ。
寅の運勢に巳の守りが加わったら、
どんなことでも出来ないことはないんだよ。
そのお母さんが生きているうちはもちろん、
死んでから後も、お前の一生を通じて
お前の後ろからいつも見守っているから、
決してそのことは忘れてはいけないよ」
と。
私はそのことを思い出すたび、
母親の言葉が有りがたく思えていつも目が潤む。